DDDで学ぶ設計講習会

@mazrean

待機中

目次

  1. DDD
  2. Hexagonal Architecture
  3. Clean Architecture
  4. デザインパターンとアーキテクチャ
  5. 設計にできることとできないこと
  6. 良い設計をするために

注意

今回の講習会での各アーキテクチャの説明は
以下の書籍・Webサイトをベースにしています
(詳細情報は参考文献に書いています)

DDD

Layered Architecture

アプリケーションを層で分割するアーキテクチャ

  • UI層: ユーザーからの入出力
  • Application層:
    アプリケーションならではの処理(ビジネスロジック)
  • Domain層:
    アプリケーションで満たすべき仕様(ドメイン)
  • Infrastructure層:
    技術的な機能の実装(ex:DBへのSQL実行)

Layered Architectureのメリット

層で分割されているので、ユニットテストが書きやすい。

手順

  1. 直下の層のmockを作成
  2. mockを使用してテストを書く

Domain Driven Design(DDD)

DDDはLayered Architectureの中のDomain層を中心にして行うアプリケーションの設計。
物凄く簡単にいうと、「仕様に従うコードを書ける設計をするべき」ということ。

Layered Architectureの問題点

Domain層Infrastructure層に依存

  • Infrastructure層でDomain層のルールが守られない可能性
  • Domain層のルールをInfrastructure層をもとに決めてしまいやすい

つまり、愚直に実装するとDDD的に良くない!

解決策

Domain層とInfrastructure層の依存関係を逆にすれば解決する

Dependency Injection(DI)

間にinterfaceを挟むことで、
依存の向きを逆にできる

注意点

interfaceの定義時には依存される側(今回ならDomain)の
データしか使ってはいけない
DBのテーブル構造関係のデータとかはNG

DI Container

interfaceにclass(Goならstruct)を割り当てるコードを自動生成するツール。

JavaのSpring Bootのやつが有名。
Goの場合、wireを使うことが多い。

Layered Architecture(DIあり)

DIでLayered ArchitectureのDomain層とInfrastructure層の依存を逆転させる

メリット

  • 仕様がコード全体で守られる
  • 技術が変わっても仕様に関するコードを変えずに済む
    • 変化の速度は基本技術仕様技術 \gg 仕様
      →変更が大幅に削れる

Domain

Domainには3種類存在する

  • Entity
  • Value Object
  • Service

例として使うアプリケーション

シンプルなチャットアプリ。
ユーザーがメッセージを投稿できる。

Service

ものに紐づかない操作。

ex) メッセージの投稿。

Entity

概念として識別が可能なドメイン。

ex) User,Message
@mazreanと@tokiは別のユーザー。

Value Object

概念として識別ができないドメイン。
不変。

ex) ユーザー名
mazreanという文字列のユーザー名と、
tokiという文字列のユーザー名はそれ自体で識別することはない。
ユーザーになって初めて識別ができるものになる。

演習: Domainを見てみよう

時間: 7min
traP CollectionのサーバーサイドはDDDベースのアーキテクチャになっている。ドメインを見てみよう!
https://github.com/traPtitech/trap-collection-server

  • Entity: src/domain直下
  • Value Object: src/domain/value以下
  • Service: src/service直下

Hexagonal Architecture

Hexagonal Architecture

DDDに対称性という考えを加えたもの
Port, Adapterという見方が特徴

Layered Architecture→Hexagonal Architecture

  • InfrastructureがApplicationに依存
  • Domainへの言及がない

メリット

  • 対称性
  • Port, Adapterという見方のイメージしやすさ

対称性

Hexagonal Architectureという名前の由来

  • 対象である方が層の境界が分かりやすい
  • 3つ以上の外部アプリケーションが存在する場合のイメージがしやすい
    • Layered Architectureの図は2方向

Port, Adapter

異なる接続口を持つ外部アプリケーションを
アプリケーションの用意したPortに合うように
Adapterで変換してPortに繋ぐ

Port, Adapter

USB Type-Aのマウス(外部アプリケーション)を
USB Type-C(Port)へ変換アダプタ(Adapter)で変換して
PC(アプリケーション)に接続するイメージ

演習: Port, Adapterを見てみよう

時間: 7min
traP CollectionのサーバーサイドにもPort, Adapterの構造が存在する
repository(データ永続化)のPort, Adapterを見てみよう!
https://github.com/traPtitech/trap-collection-server

  • Port: src/repository直下
  • Adapter:
    • src/repository/gorm直下
    • src/repository/mock直下(go generateすると生成されます)

Clean Architecture

Clean Architecture

Hexagonal ArchitectureやOnion Architectureなどを統合して、
より実用的にしようとしたもの

Layered Architecture→Clean Architecture

Domainが消えていないHexagonal Architecture

メリット

DDDのメリット+Hexagonal Architectureのメリット

  • 仕様がコード全体で守られる(DDD)
  • 技術が変わっても仕様に関するコードを変えずに済む(DDD)
  • 対称性(Hexagonal Architecture)

DDD関連のアーキテクチャの関係

休憩

10min

デザインパターンとアーキテクチャ

デザインパターン

設計時によく現れる構造のパターン。
オブジェクト指向のパターンについて述べたGoFのものが有名。

以下のものを例として説明する

  • Abstract Factory Pattern
  • Adapter Pattern

Abstract Factory Pattern

オブジェクトの生成と使用を分離するためのパターン。
依存関係の逆転を実現するもう1つの方法。
ただし、DI Containerがあれば基本DIの方が楽。

Adapter Pattern

欲しいinterfaceに合わないライブラリなどのinterfaceを、
欲しいinterfaceに合わせるデザインパターン

Hexagonal ArchitectureとAdapter Pattern

class、interfaceの名前に注目。
Hexagonal ArchitectureのPort・Adapterの考えは、
Adapter Pattern由来であることがわかる。

デザインパターンのデメリット

デザインパターンを使うと通常構造が複雑になる

デザインパターンの使い方

デザインパターンは問題解決の手段。

誤: 使えるから使う
正: 〜という問題を解決できるから使う

デザインパターンは問題を明確にした上で使うべき。

デザインパターンとアーキテクチャ

多くのアプリケーションで発生する問題が存在する。
ex) 外部サービスのアップデートに追従しやすくしたい

これに対処できるようなデザインパターンなどの組み合わせがアーキテクチャ

設計にできることとできないこと

設計の目的

最終的な目的は「開発の円滑化」
そのために、アプリケーションに適した

  • 柔軟さ
  • 複雑さ
  • 開発速度

などを実現するのが目的

トレードオフ

柔軟さを生み出す手段としてAdapter Patternを使う場合

  • interfaceに適合させるための構造体から構造体への変換が発生
    →コード量増加
    →開発速度低下
  • interfaceについての理解が必要
    →複雑化

欲しい項目全てを実現することはできない!

設計でやるべきこと

トレードオフのバランスを見て、
アプリケーションに適した

  • 柔軟さ
  • 複雑さ
  • 開発速度

などのバランスを実現すること

良い設計をするために

設計の目的

最終的な目的は「開発の円滑化」
そのために、アプリケーションに適した

  • 柔軟さ
  • 複雑さ
  • 開発速度

などのバランスを実現するのが目的
→適切なバランスについて考えるべき

バランスの考え方

自分の場合、以下のような流れで行なっている

  1. 将来起こりうる作業を予想する
  2. 要求の洗い出し
  3. 要求にあったアーキテクチャを選択
  4. 適用するとより適した構造となりそうなデザインパターンなどを適用

traP Collectionの場合

  • ストレージの変更
  • API設計の修正

を予定していた。
逆に仕様は長年話していてそれなりに固まっていた。
Clean Architectureをベースにした。

各層の中で細かく共通化したい部分が発生しそうだったので、
そのような部分を構造体で切り出して委譲するようにした。

アーキテクチャの学び方

自分は以下のステップが良いと考えている

  1. アーキテクチャの原典をなんとなく理解
  2. アーキテクチャの前提となっている知識の理解
  3. 要素へ分解して、同じアーキテクチャを組み上げるイメージをする
  4. アーキテクチャの原典を理解

よくある疑問

Q. interfaceはどのぐらい抽象化すべき?
A. 想定される変更に対するコストが最小になる程度

Q. Clean Architectureするとコード量が増えて辛い
A. 規模に対してClean Architectureではオーバースペックな可能性大

まとめ

アーキテクチャを使う際には

  • しっかり理解した上で
  • アプリケーションに適切か考える

という流れを踏むと良い

最後に

長いものでなくて良いので、講習会をやってみてください!

  • 知識が整理できる
  • 興味がある分野に周りが興味を持ってくれて、刺激を受けられる可能性が上がる
  • やっていた仕事を周りに任せられる

など、良いことが無限にあります。

参考文献